マグロの背や腹の違い、上赤身から大トロまでの各部位の特性をご紹介します。マグロの魚体における位置や筋の特徴、脂の乗り具合なども解説します。
背・腹の違い
魚体の大きなマグロにおいて、背と腹や部位の違いはおいしい使い方や切り方に大きく影響してきます。
背から取れる部位:上赤身、赤身、中トロ、力身
腹から取れる部位:上赤身、赤身、中トロ、大トロ
部位の違い
上赤身:天パネした際、三角形の一番上にある赤身
筋はほぼなく、マグロ本来の酸味、うま味を存分に楽しめます。お店によっては赤身の中でも品質の良いこの部位を、【上赤身】として格差をつけることもあります。魚体が小さくてもこの部位を切り分けて格差をつけることで、マグロの全体の価値を上げるのもテクニックの一つです。
赤身:上赤身を切り出して残った部位
上赤身よりも筋が入るようになります。切り付けの際には筋の向きに対してなるべく直角に包丁を入れることで口当たりの良い切り身になります。
中トロ【血合脇】:中トロの中でも最も血合いに近い柵
中トロの中では最も筋が細く、口当たりが良いです。この部位が中トロの中で一番美味いという人は多いです。垂直にサク取りすると血合側が丸くなりますが、天パネの位置や包丁の入れ方を工夫することで四角に近いサクを切り出すことも可能です。ただし血合が少しでも残っていると一気に価値を失ってしまうので、血合の除去の際は注意が必要です。
中トロ:天パネ後、皮目の脂を含む部分
力身に近づくにつれだんだんと筋が太くなっていきます。中トロの柵取り、スライスの際には筋目の向きに注意したいです。柵取りの際は筋目に対して垂直方向に力を入れるのが基本です。部位にもよりますが、力が筋目に沿ってしまうと、身割れの原因になります。
力身:中トロをとっていき、最後に残る三角形の部分
筋が強く、敬遠されがちですが、背の中からとれる力身の真ん中の部分は全くと言っていいほど筋がなく、脂が均等に入っているため、手間をかけてここを取り出す価値は十分にあります。周りの大筋はスプーンなどでねぎとり、ねぎとろとして提供するのがおすすめです。
大トロ:腹上~腹中にある、内臓を囲む部位
いわずと知れた高級部位です。脂のノリは全部位中最高です。養殖のマグロであったりするとその分しつこくなってしまうこともありますが、炙りや柑橘系などの薬味でさっぱり食べられる工夫もシーズンによっては必要になってきます。また脂を多く含むため、色変わりが他よりも早いのも特徴の一つです。
大トロ【カマ下】:大トロの中でもカマの脇にある、腹上からしか取れない部位
筋目は一方向ではなく網目状で、全体的に脂を含んでいます。刺身の場合、厚切りにしてしまうと食感が悪くなってしまうので、手間でも薄切りで提供するとおいしくいただけます。マグロ一本からわずかしか取れない部位なので、特別なメニューなどに適しています。
上(かみ)・中(なか)・下(しも):マグロの四分一を3等分した時の考え方
■上(かみ)
頭に近い部位。赤身は少なく、中トロは若干筋は太いですが、下にくらべれば数自体は少ない。若干ではありますが身の密度が低くなるという人もいます。また色に関しても頭に近いところではあまりはっきりしないこともあります。価格と歩留まりのバランスが良いです。
■中(なか)
真ん中の部位。最も扱いやすく、全体的に筋も少ないです。部位ごとの切り分けもしやすく、好まれる部位です。ただ要望が集中するため、上や下にくらべて価格が高くなる傾向があります。
■下(しも)
尾に近い部位。尾に近くなるほど筋が太くなり、中トロとしての価値は低くなってきますが、この筋を逆に活かし、竜田揚げなどの加熱メニューに転用するとおいしく歩留まりを確保できます。また、お刺身だと思い切ってねぎとってしまうのが無難です。
上身・下身:魚を正面から見たときに右側か、左側の考え方
マグロが市場で並ぶ際に、必ず背を上、頭を左に向けるルールがあります。これは魚自身の重みで身に負荷がかかり、品質の差が生まれてしまうからです。この際に下側になる、マグロの右半身を【下身】、上側になる左半身を【上身】といいます。